リレー随筆

暮らしの中に神々が・・・
田野 良子
平成22年12月

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 インドネシア・バリ島をツアー旅行で訪れた時、バスの車窓を流れる景色に、各家の屋敷の中に大小いくつもの建物を見かけ、何と豊かな佇まいなのだろう! との印象を受けました。 後に それらの建物のひとつひとつには神々が祭られていて、人々は朝な夕なにお花や果物等をお供えし、祈りを捧げるのが常なる事を知りました。

 所変わって、我が愛すべき故郷“弥富”のお話。 幼き頃の記憶をたどれば、我が家にもいくつもの神棚がありました。八幡様は奥の間、出雲大社・伊勢神宮や津和野のお稲荷様は中の間、 お釜様は居間と台所の間あたり、井戸の傍には水神様、蔵や家畜の居た駄屋にも神棚があり、田んぼには祈祷を受けた御幣を立て・・・といった具合です。

 暮には神棚を清め、榊を飾り、神酒をお供えしました。それらの恒例行事を、冬の冷気の中、身も気も引き締まる思いで手伝ったものです。明けて新年 お供えしたお米・干し柿・ 昆布を神棚から下げて頂き、梅茶を飲むことが新しい年のスタートでした。

 また 部落には王子様・天神様・お祇園様等の社があり、秋の天神様祭礼での紅白の餅まきはとても楽しみな事のひとつです。

 神主さんがお祓いをしながら、神輿を奉じて田んぼを巡る“虫祈祷”という夏の祭礼行事もあります。(今は軽トラックでスピードアップした田んぼ巡りのようです)  多くが農薬・化学肥料に依存する時代になっても、まだ、神々への思いを残している事の現れでありますね。

 ♪うさぎ追いし彼の山 こぶな釣りし彼の川♪ の歌詞そのままの、大きいまち(田)・小さいまちが混在し、春はれんげのピンク・菜の花の黄・麦の緑に彩られ、 田中の小道をハンミョウに導かれ辿った里やまの風景は変わりましたが、神々が人々の暮らしの中に在るという事はバリ島・その他・国を問わず共通している事なのでしょう。

 いまひとつ 記しておきたい事に石州舞があります。今は石見神楽で代表されるように、地方芸能・伝統芸術として、美しい装束・煌びやかなおろち・ ドライアイスのスモーク使い等で華々しくホール等で上演されています。

 私の幼き頃は秋祭りに石州舞が部落の公会堂で行われていました。観衆も演者も地下の人達で、あれはだれそれ、上手いの下手だのと語り合い、客席までも分け入り熱演する演者スサノオに、 幼き子等は悲鳴をあげといった様子でたいそうな盛り上がりでした。

 秋祭りに皆が楽しむ石州舞も神に収穫への感謝を込めて集う催事であり、人々の暮らしの中に神々が親しみをもって在るという事なのでしょう。

 愛しき故郷、愛しき人々、愛しき神々、に感謝!!


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 来月はxxxx様にご寄稿を御願いします。
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